中国国内へのファイル転送をAlibaba Cloud環境でテストしてみた(後編)
- 中国へのファイル転送
いざ、計測!その結果は意外なものに(後編)
さて、開発部に依頼した大容量ファイル転送を計測するための環境が出来上がったところでさっそく計測に入ります。その前に、まずは、素の状態のインターネット回線の速度がどのようなものか確認します。
インターネット速度計測サイトの結果
現地のクラウド上に構築した仮想PC環境から日本のテストサイトを計測。これはグレートファイアウォール越しの速度となります。全体的にアップロード(中国から日本)は速度が出ていますが、ダウンロード(日本から中国)方向は制限されている傾向です。
念のためグレートファイアウォールを通さない中国国内のテストサイトを使った計測も実施しました。さすがに中国国内であればかなり高速な環境です。国内同士なのに北京がなぜタイムアウトになったかは謎です。
現地→日本のテストサイト | 現地→現地のテストサイト | |||
計測地 | アップロード | ダウンロード | アップロード | ダウンロード |
上海 | 76.00 | 15.00 | 212.00 | 205.20 |
香港 | 180.00 | 170.00 | 211.99 | 207.01 |
北京 | 40.00 | 0.39 | T/O | T/O |
青島 | 33.00 | 1.80 | 213.98 | 522.35 |
杭州 | 55.00 | 2.10 | 206.20 | 212.65 |
備考:検索エンジンについて
日本国内で利用出来る検索サイトはほぼほぼ機能しない(Google、Yahooは使えませんでした)。
検索までは実行できるが表示されない。そもそもトップページでない場合も。
中国から利用できるのは、百度(Buidu)ぐらい(最近はBingもいけるようです)。
高速ファイル転送サービスDIRECT!EXTREMEをテスト
次にDIRECT!EXTREMEの通常モードと高速モードを比較してみました。少しわかりづらいのでテストで使ったモードの詳細をご説明します。DIRECT!EXTREMEはファイル転送の際に2つの通信モードが選択でき、都合3種類の通信プロトコルを使い分けられる仕様になっています。
「通常モード」
通常のブラウザを使用した送受信で一般的なTCPプロトコルを使います。高速モードの場合にはVirtual Director Xという当社のアプリケーションソフトウエアが必要になりますが、このモードではアプリのインストールが不要でブラウザ環境のみで利用可能です。
「高速モード」
アプリを利用してUDPプロトコルまたはTCPマルチセッションのプロトコルで高速にファイルの転送を行います。”または”と書いたのは、ポートの制限がない場合はUDPでの通信プロトコルを使いますが、セキュリティポリシー上UDPポートを利用できない拠点環境の場合、アプリが自動判断してTCPマルチセッションを利用するためです。
(ア)通常モード(TCPでの通常送信)での計測結果
まずは、通常モードと呼ばれるTCPプロトコルでのテストを実施します。このモードはブラウザ経由の一般的なサービスと同じ方式での送受信となりますので、皆様がお使いのオンラインストレージやURLでの送信サービスなどと条件は同等と考えています。
通常モード | ||||
---|---|---|---|---|
ファイル | 100MB | 1GB | ||
アップロード | ダウンロード | アップロード | ダウンロード | |
上海 | 17.89 | 1.00 | 18.19 | 1.12 |
香港 | 28.74 | 134.14 | 28.19 | 149.16 |
北京 | 15.19 | 0.59 | 9.70 | 1.11 |
青島 | 17.50 | 0.62 | 14.86 | 1.02 |
杭州 | 16.43 | 1.03 | 16.64 | 1.07 |
(イ)高速モード(UDP)での計測結果
その次に高速モードで計測しました。テスト環境では特にポート制限をかけていませんのでUDPのプロトコルでファイル転送を行った結果です。当初の仮定では、他の海外通信と同じくこのUDPを使ったテストに一番期待をかけていました。
手始めの100MBのファイルの計測ではかなり満足に推移。次に1GBのファイルを計測してみると…ん?なんか今一つ。
送信開始した当初は順調にダウンロードしていたのですが、途中から速度が低下。結果的なスループットは数Mbps程度の速度。途中でグッと絞られている感覚です。
ちなみにアップロード(中国→日本)への転送は快適なようです。やはり中国国内からみたインバウンド(入ってくる情報)は管理されているのでしょうか。リージョンが異なるのに同じ数値が並んでいるところは、テスト時点での各リージョンのワイヤースピードの上限といったところでしょうか。特にUDPプロトコルの特徴は、あればあるだけ回線を使える点なので、他に同じような利用者がいない場合は上限まで回線を利用できたのではと考えています。
高速モード(UDP) | ||||
---|---|---|---|---|
ファイル | 100MB | 1GB | ||
計測地 | アップロード | ダウンロード | アップロード | ダウンロード |
上海 | 268.28 | 28.74 | 190.79 | 3.17 |
香港 | 268.28 | 268.28 | 174.55 | 174.55 |
北京 | 268.28 | 268.28 | 174.55 | 2.50 |
青島 | 33.00 | 268.28 | 6.13 | 2.94 |
杭州 | 268.28 | 268.28 | 167.43 | 5.17 |
この結果ですと、GB級の3DCADデータなどの転送の際にはかなり時間がかかってしまいます。大容量ファイル転送を標榜している当社としては今一つ納得のいかない結果。そこで急遽TCPマルチセッションでの計測も追加することにしました。
一般的にはUDPプロトコルの方が高速なため、あまり期待はできないとは思いつつもせっかく環境作ってもらったのでついでにやって見ようと勝手にテストメニューを追加。
周りからもUDP速度出ないならTCPマルチセッションではもっと出ないんじゃないかと懐疑的な反応です。「お客様がUDPポート制限してるかもしれないし」と謎理論を繰り出しつつテストを続行します。
しかしながら、ポート制限(UDPを遮断)ってどうすればいいのかがわからず、再度技術担当者に相談。Windowsファイアウォールのポート制限を全拠点のPCにセットすれば出来ますとの事です。簡単だけどリージョンの数があるので面倒くさい作業なんだろうなと想像はつきますが、「素人用にマニュアル作るより早いですよね」との謎理論その2を駆使して技術担当者に設定をお願いしてしまいました。
そして速度計測をしてみた結果…
(ウ)高速モード(TCPマルチセッション)での計測結果
高速モード(TCPマルチセッション) | ||||
---|---|---|---|---|
ファイル | 100MB | 1GB | ||
計測地 | アップロード | ダウンロード | アップロード | ダウンロード |
上海 | 44.71 | 16.77 | 22.92 | 55.43 |
香港 | 114.98 | 73.17 | 118.90 | 86.36 |
北京 | 53.66 | 10.88 | 16.47 | 48.54 |
青島 | 9.25 | 16.10 | 7.53 | 19.49 |
杭州 | 53.66 | 50.30 | 78.13 | 56.19 |
おお、これは…。ホームランはないもののイチローの様なアベレージヒッター。
予想外の計測結果におどろきました。グレートファイアウォールの癖なのかどうかは不明ですが今回の計測結果ではTCPマルチセッションの方が安定してファイル転送ができそうです。
もちろん、テストの時期が数週にわたりましたので、状況によるとは思います。中国の提携先や工場へのファイル転送でお困りの際は試してみる価値はあるのではないでしょうか。
最後に、WindowsファイアウォールでUDPポートを閉めるマニュアルもちゃっかり作ってもらいましたので上げておきます。
DIRECT!EXTREMEのトライアルは無料ですのでお困りの際は試してみてください。